思春期の長男、嚥下障害の次男 それぞれの弁当で築いた親子の関係性「母が楽しんで作ることで子どもも大きく変わっていく」

(左から)長男への海苔文字弁当、次男へのミキサー食キャラ弁(画像提供:kyge.191292)
 毎日の手作り弁当を通して、2人の息子とのコミュニケーションをはかっている母親のInstagramが話題に。多感な時期を迎えた長男には海苔を切って文字にしてさまざまなメッセージを書き込み、肢体不自由という障害を持つ次男には食べるモチベーションを上げるためにキャラ弁を作り、それぞれに違った形のお弁当でコミュニケーションを取っている。お弁当を作る上でこだわった点、息子たちそれぞれのお弁当に込めた想いなど、母親であるkyge.191292さん(@kyge.191292)に話を聞いた。

【写真】「母よ 嬉しいんだがせめて片面にしてくれ。でもありがとう」大学受験後、長男から初めて感謝の反応 海苔文字おにぎり

■思春期長男への“海苔文字”弁当 時に説教、時に激励…「コミュニケーションが取れるように」

「#お兄の海苔文字弁当」というハッシュタグと共にInstagramに投稿されている手作り弁当の写真の数々。遅寝で遅刻気味のときは「ねぼうは自己責任」、弁当箱を学校に忘れた日には「弁当たべたらすぐしまう」、部屋に溜まったペットボトルを見兼ねて「ペットボトルや始めんの?」などと、ユニークなお説教メッセージを海苔文字で伝えている。

 きっかけは、現在は大学2年生である長男が中学生の頃、学校にお弁当箱を忘れてくることが続き、「メモ代わりにお弁当に海苔文字でメッセージを書いたら忘れないかも?」と思いトライしたことが始まりだった。

「最初は思うように文字が切れないし、時間もかかりました。初めてカタカナで『ベントウワスレナイデ』と海苔文字を切ったときは、ご飯が温かいうちに乗せて昆布みたいに縮れてしまって失敗してやり直したり…。毎日くり返しやることでコツを掴んで、フリーハンドで海苔文字を切ることに慣れていきました」

 長男から「恥ずかしいからやめてくれ」と言われたこともあったが、「母から言われたことを返事ばかりで実行しない君の言うことは聞きません!」とその後も作り続けた。

 長男の反応はいまいちなままだったが、高校3年の大学受験の際に、変化が。おにぎりに乗せた「表→大丈夫 落ち着いて、裏→深呼吸 リラックス!」という海苔文字に対して、初めてLINEで感想が送られてきた。

「『母よ メッセージ嬉しいんだがせめて片面にしてくれ。隠せない。でもありがとう』とちょっと困りながらも感謝の言葉を送ってくれました。その言葉と受験がひとまず無事に終わった安堵感とでウルッとした出来事でした」

 中学1年の終わり頃から急に目つきや態度が変わり、思春期を迎えた長男。突然の変化にうまく対応できず、そんな自分自身にもイライラする日々を過ごしていたというkyge.191292さん。そんな思いを解消していたのが海苔文字だった。

「海苔文字弁当をLINEのタイムラインやインスタにアップしたことで、たくさんの共感のコメントや先輩ママさんからのアドバイスなどをいただきました。おかげで『うちの子、こんなんだけど大丈夫なんだろうか…』という不安や心配が消えたり、気持ちが楽になったり救われたりして、反抗期を乗り越えられたなと感じ、本当にありがたく思っています」

 そのときそのときの長男への想いを込められるお弁当作りは、「自分にとって楽しい時間の一つになっていた」という。中学、高校、大学と、息子が成長していく過程で海苔弁当のメッセージも変化していった。

「イライラ解消からスタートした中学の海苔文字弁当は、注意や説教などをひたすらメッセージに込めることが多かったです(笑)。高校でも説教などが多かったですが、部活や学校生活の応援や励まし、面と向かって言いにくい感謝の気持ちなどをメッセージに託したり、ときには遊び心を取り入れたりして、長男とコミュニケーションが取れるような形にすることもありました」

 そして、大学生になった現在は、弁当に対する長男の反応も大きく変わったという。

「『弁当を作ってもらえるって本当にありがたいわ~』とか『ありがとう』や『美味しかったよ~』と素直に言葉にして伝えてくれることが多くなりました。そんな言葉に単純な母ちゃんは心を揺さぶられ、『このおかず好きって言ってたよな~。入れたら喜ぶかな』『また美味しかったって言ってもらえるように…』という想いを込めて作れるようにようやくなれた気がします(笑)。それなのに、もうなかなか作る機会がなくなってきてしまっています…」

■嚥下障害を起こした次男のためのミキサー食 弁当作りにこだわることで息子の成長も実感

 肢体不自由という障害を持つ次男に対しては、ミキサー食で『鬼滅の刃』や『ドラえもん』、『スヌーピー』などのキャラ弁を制作。「#エイトマンのキャラ弁」というハッシュタグと共にエイトマンの日々の様子をInstagramに綴っている。“エイトマン”とは次男の愛称だ。

 ご飯が大好きで食いしん坊だった次男が、2019年にインフルエンザの高熱の影響から体調が急変。食べ物に対して全く反応を示さなくなり、口にご飯を入れても飲み込めない嚥下障害の状態になってしまった。体重がどんどん減少し、不安が大きくなっていく中で、kyge.191292さんは次男に食事をさせる時間を憂鬱に感じるようになってしまう。このままではダメだと自分を鼓舞し、ミキサー食のデコレーションにチャレンジをした。

「最初の頃は、慣れていなかったのでお弁当に入れられそうな物を考えることにも苦労ししたし、毎回ミキサーでおかずやご飯をペースト状にするのも大変でした。特におかずは、食べる分だけをミキサーにかけるとなると量が足りなかったり、思うような形状に出来なかったり、水分が多めになってしまうとデコレーションがうまくいかなくなったりと苦戦しました」

 当初、次男は視線も合わない状態で、食べたいという欲求自体が見られなかったが、約1年かけて、お弁当を見て声を出したりジェスチャーをしたりするように。次男なりに「早く食べたい!」とアピールするようになった。

 なかでも特に思い入れが強いのは次男の顔を描いたキャラ弁。次男が食べている姿を想像して「これって自分を食べることになるんだな~…ん?!共食いじゃん(笑)!!」と作りながら思わず笑ってしまった。

「エイトマンの顔がとっても作りやすいことに気づき、共食いバージョンはそれから度々作るようになりました。小6のときの養護学校の文化祭では、ピーターパンならぬ『エイターパン』の役をやることになり、『エイターパン』の顔を文化祭当日のお弁当で作りました。だいたい本番になると居眠りしてしまうことが多いエイトマンなのですが、この『エイターパン』のときは練習の成果を思った以上に発揮してくれました。エイトマンの出来栄えにとても感激し、思い出深いデコ弁の一つになっています」

 Instagramに日々の手作り弁当の写真を投稿したことにより、kyge.191292さん自身が得たものも大きいという。

「私自身、エイトマンの状態が悪化したときに気持ちがドーンと落ち込んだものの、ミキサー食のデコレーションを始めたことで自分自身のモチベーションアップにつながり、楽しみながら作ることで子どもに与える影響も大きく変わっていくということが実感できました」

 基本的には面倒くさがりで、お弁当を作るのを億劫に感じる気持ちのほうが大きいというのが正直なところだと率直な想いを吐露するkyge.191292さんだが、キャラ弁を作る時間は特別なものになっている。

「『エイトマンが完食してくれるかな~』とか『施設のスタッフさんも食事介助しながら楽しい気持ちになってくれるかな~』などと、いつもワクワクしながら作っています。また、イメージしたものが形になる達成感を楽しめる時間でもありますね」

 生まれた翌日からNICUに入り、これまでたくさんの手術をして病気を乗り越えてきた次男も、今年の春から中学3年生になる。

「ミラクルをたくさん起こして『ご飯が大好きな食いしん坊エイトマン』に復活してくれたこと、本当に本当に嬉しかったです! 言葉は話せなくても、『ご飯食べたい!もっと欲しい!』というエイトマンなりのアピールをしてくれることが幸せ。エイトマンに喜んでもらえるように、母ちゃんはこれからも頑張るよー!!」
公開:2022-02-03 15:30
更新:2022-02-03 15:30
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