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肺でつくられるタンパク質の一種が、たばこの煙から肺を保護し、肺気腫の発症を抑制することを山形大大学院理工学研究科の黒谷玲子准教授(51)らのチームが突き止めた。成果が国際学術専門誌オンライン版に掲載された。将来的に、喫煙などで傷んだ肺の状態を回復させる治療薬への応用を目指す。
タンパク質は「セクレトグロビン(SCGB)3A2」。米国衛生研究所との共同研究で、このタンパク質がアレルギー性肺炎や肺線維症を改善することを明らかにしており、今回は山形大医学部の協力も得た。
研究では、せきや息切れなどが起き、呼吸が徐々に困難になる慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)への効果を調べた。COPDは主に喫煙により気道と肺胞に慢性炎症が生じて発症する。肺胞の組織が壊れる肺気腫に進行すると、現状では肺の機能を回復させる根本的な治療薬はないという。
遺伝子組み換え技術により(1)通常(2)このタンパク質をつくらない(3)過剰につくる―の3種類のマウスを用意し、6カ月間、たばこの煙を吸わせるグループと吸わせないグループに分け、肺の組織を観察した。煙を吸った(1)と(2)は肺胞壁が壊れ、(2)は(1)に比べ、より肺気腫が進んだ。(3)は煙を吸ったマウスも、吸っていないマウスと同様の正常な肺の状態を保っていた。
過剰につくる状態にしたマウスの肺では、肺気腫を引き起こす酵素の動きを抑制する別の酵素が増えていた。メカニズムについては不明な点が多いといい、さらに研究を深める。黒谷准教授は治療薬の開発までは長期スパンになるとし「治療効果に関する研究を進めるとともに、このタンパク質を薬剤として利用する際の手法を検討し、治療薬の開発につなげたい」と話す。