直木賞作家で新庄市の観光大使を務める今村翔吾さんが全国をワゴン車で巡る企画「まつり旅」が24日、同市のかむてん公園内すぽーてぃあでゴールを迎えた。同所で開かれた記念イベントで今村さんは、約3カ月118泊119日にわたったお礼行脚を振り返り「出会うはずのない人がここにいる。今日本で一番幸せな作家だ」と語った。
2025年の新庄開府400年に合わせた記念事業として市などが実施。今村さんは新庄藩の火消しが主人公の時代小説「羽州ぼろ鳶(とび)組」シリーズで人気を博し、市をたびたび訪れるなど関係が深い。まつり旅は全国書店にお礼をしたいと5月30日に滋賀県守山市を出発。ワゴン車内で執筆を続け、書店や学校など計271カ所を回った。
今村さんは午後2時ごろ、ファンや関係者のメッセージが刻まれたワゴン車「たび丸号」に乗って会場に到着。ぼろ鳶組を題材にした21年新庄まつりの山車(やたい)が脇に置かれたステージに上り、両手を広げてゴールテープを切った。今村さんは感極まった表情で「僕一人ではできなかった。新庄の皆さんが迎えてくれて本当にありがとうございます」とあいさつした。
旅の報告会で今村さんは、直木賞受賞前に執筆への悩みを抱えていたことを明かし「旅を通して自分が何のために書いているのか再確認したかった。一つ乗り越えられたかなと思う」とし、会場に集まった300人以上の人に「多くの人が熱く温かく迎えてくれた。熱さと温かさは同居するんだと感じた」と感謝した。
たび丸号の市への贈呈式もあった。市は人目に付く場所での展示を考えている。