各日で優勝チームが入れ替わる激戦となった今大会も南陽・東置賜の強さは際立っていた。初日、最終日とライバルに先着を許しても、1位となった第2日の「貯金」を生かして総合10連覇を達成。総合優勝を見据え、3日間を俯瞰(ふかん)した戦略は選手層に厚みがあってこそなせる業。戦力は充実しており、今後はどこまで連覇を伸ばせるかにも注目が集まる。
実業団のNDソフト勢を含めた主力の社会人はとにかく層が厚い。区間賞は7で、どの一般区間も大崩れしない安定感があった。堅実にたすきをつなぐ勝負に徹した戦略が偉業につながったといえる。とはいえ、中高生区間は苦戦を強いられた感がある。ジュニア層の強化・育成は「黄金期」継続のポイントだろう。
総合2位の天童・東村山には勢いがあった。新戦力の細谷翔馬(天童市役所)は最長8区(19.6キロ)の区間記録を大幅に更新。流れを一気に変える爆発力のある走りはインパクト十分だった。地力のある社会人がそろい、中高生のレベルも高い。王者に迫れるだけの力を証明し、今後が楽しみだ。
総合3位の酒田・飽海は大黒柱の菅原翼(遊佐町役場)を中心に堅実なレースを展開して初日優勝につなげた。高校生が首都圏の強豪大学でもまれ、卒業後は地元に就職する好循環が続いており、総合力の高まりを感じさせた。
対抗馬とみられた山形は9位に沈んだ初日のレースが誤算だった。力のある社会人の若手や箱根駅伝で活躍した志貴勇斗(青学大)を擁しただけに、序盤のつまずきが最後まで響いた格好。最終日優勝を果たしたように戦力は王者と引けを取らないだけに、奮起を期待したい。
実業団の強豪・日立物流で主力を担った竹内竜真(NDソフト)が8年ぶりに北村山に復帰。箱根駅伝の山上りで存在感を示した四釜峻佑(順大)も長井・西置賜で出場した。ともに低迷するチームを活気づける鮮烈な走りを見せるなどみどころは多かった。
3日間の優勝チームが異なり、目まぐるしく順位が変動するなど、各チームの強化・育成は着実に形になっているようだ。中学生から社会人のベテランまで幅広い年齢層が一丸となってたすきをつなぐ本大会。今後も個性ある選手が力を集結する、魅力あるチームづくりを進めてほしい。