広い部屋でも隅っこが落ち着くのだろうか。壁に背を預けて膝を折り畳み、一点を見つめて無心でササを食べている。私が老いたパンダでもああする気がする。ちやほやされて、まんざらでもない調子で草の上を転がる青年パンダの時期はとうに過ぎた。いまはただ心静かに、好きなササをかじっていたい。和歌山アドベンチャーワールドで暮らす永明(えいめい)に会うたび、「お父さん、今日もお疲れさま」と言いたくなる。2022年に30歳を迎え、人間で言うとおよそ90歳のご長寿となった。
昨年末、パンダファンの間に衝撃が走った。もともと帰国が予定されていた上野動物園のシャンシャン(メス・5歳)だけでなく、和歌山の桜浜(お…